第二十回「お茶と私の詩句発句」入賞作品発表
全国のお茶ファンの皆様、そして俳句や川柳をたしなまれる皆様、どうもありがとうございました。
入賞の皆様へお茶の詰め合わせをお送りしますので、楽しみにお待ちください。
※今年のカルチャースクールは開催がございません。何卒ご了承ください。
❮ グランプリ ❯
◆ 俳句
あかつきに淹るる緑茶や酔芙蓉
大重 和哉(鹿児島市)
◆ 川柳
お茶の芽も音符に見える茶憩好(チャイコウスキー)
松元 良子(出水市)
❮ 優秀賞 ❯
◆ 俳句
名月や私は私茶を点てて
馬場 ナオミ(鹿児島市)
点てし茶の翡翠の色や涼新た
能㔟 俊子(鹿児島市)
語り部をうるほす番茶ヒロシマ忌
園田 千秋(鹿児島市)
◆ 川柳
お茶しようその一声で仲直り
清水 憲子(鹿児島市)
避難所へ運ぶ薩摩の茶の香り
春田 理恵子(薩摩川内市)
喜寿の茶会こころと皺が紡ぎ合う
松園 耕造(鹿児島市)
❮ 入選 ❯
◆ 俳句
窯出しの貫入の音茶が咲けり
瀬角 龍平(垂水市)
億年の星せめぎ合ふ新茶畑
白坂 昭典(霧島市)
晩節を薫る焙じ茶芙美子の忌
板坂 良子(鹿児島市)
十二月八日茶碗に残る泡ひとつ
春田 眞未子(薩摩川内市)
茶の花やひと日二便のバスのりば
野間 慶子(垂水市)
◆ 川柳
大谷の記録が茶事を賑わせる
吉松 錬(薩摩川内市)
「粗茶です」と厚い化粧で薄いお茶
黒飛 義竹(広島県広島市)
お茶しよう多忙な日々の句読点
青柳 婦美子(栃木県宇都宮市)
値上がりはスリムボトルで茶を濁す
新家 益一(愛媛県松山市)
「お茶と私の詩句発句」選評
審査員 岡田 哲也(詩人)
<俳句>
俳句には、季題や季語をよみ入れることを旨としています。
グランプリは「あかつきに淹るる緑茶や酔芙蓉」でした。酔芙蓉は夕方には白い花が赤く染まるのでこの名があります。「あかつき」「緑茶」「酔芙蓉」と連なることで、色合いの移りかわりと、目覚めのお茶の爽やかさが見事です。
優秀賞の「点てし茶の翡翠の色や涼新た」では、ヒスイとリョウという語感が、ひと味変わった趣きを出しています。
「名月や私は私茶を点てて」。これはやはり「私は私」という二句目がミソです。私小説的というか諧虐とユーモアがあります。
「語り部をうるほす番茶ヒロシマ忌」。ヒロシマ忌が季語です。語り部の熱弁と番茶との組み合わせに味わい深さがあります。
入選作もお好きに味わって下さい。お茶と同じで何回も読むとまた味わいにも味が出てきます。
<川柳>
川柳には季語は要りません。語呂あわせ、風刺、駄洒落などもよく見かけます。
「お茶の芽も音符に見える茶憩好(チャイコウスキー)」
語呂合わせ、しかもお茶のためにチャイコフスキー家はあると思わせるほどの白眉でした。
「喜寿の茶会こころと皺が紡ぎ合う」 まさに心ほどける、体ほぐれる茶会ですね。
「避難所へ運ぶ薩摩の茶の香り」 せめてほっと一息ついて頂きたいものです。
「お茶しようその一声で仲直り」「お茶しよう」というのは実に有難い、しかも便利な言葉ですね。
あと今年は大谷翔平さんがらみの作品が印象に残りました。
川柳をやっていると、単眼でなく複眼になりますよ。心身の健康のため、川柳をぜひどうぞ。